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【特別記事】◆種苗法についてレポート

みなさまにむけて「種苗法についてレポート」が届きました。お読みください。

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種苗法改正の真の狙い
2019年の11月に「ブランド果物、海外流出防げ 種苗法改正へ―農水省」という見出しのネットニュースを読んだ際に「なるほど、こうして真実は歪められていくのか」と強く思ったのをよく覚えている。その記事には「種子や苗木の国外流出が相次ぐブランド果物の保護を強化するのが狙いで、農水省は来年の通常国会に種苗法の改正案を提出する。」また種苗法改正のキッカケとなったのは「日本で2006年に品種登録された高級ブドウ「シャインマスカット」の苗木が中国と韓国に流出したことにある」と書かれていた。確かに始めて「種苗法」という法律を知った人からすれば、法改正には賛成だと思ってもおかしくはない。案の定、この記事を読んだ人のコメントには「日本は法整備が遅すぎる。早く改正をするべきだ」や「中国、韓国に奪われるなんて許せない」などの意見が多く見られた。しかし真実は違う。たとえ種苗法を改正しても種苗法は国内法であるために国外への流出を防ぐことはできない。現に農林水産省食料産業局知的財産課は2017年に「この事態への対策としては、種苗などの国外への持ち出しを物理的に防止することが困難である以上、海外において品種登録(育成者権の取得)を行うことが唯一の対策となっています。」とコメントを出している。つまり種苗法改正では国外流出は防ぐことは出来ず、国外流出に対しては、海外で商標登録をする方が重要なのである。また国外流出は現行の種苗法でも対応ができ、海外へ流出をした場合は刑事告訴することが適切な対応であるとさえ言われている。では何故今になって種苗法改正を行うのか。それは種苗法改正には真の狙いが別にあるからだ。

種苗法における真・副・控
種苗法改正の真の狙いは、種苗法改正という入口だけを見ていては分からない。法律は単体で見るのではなく、点と点を繋ぎ合わせていくことで真の狙いが見えてくる。今回は3つの法律がポイントとなる。まず初めに2018年4月1日を持って廃止となった「主要農作物種子法」(いわゆる種子法)。次に種子法のすぐ後を追うようにして成立した「農業競争力強化支援法」。そして最後は今回問題となっている「種苗法」。これらの3つの点を繋ぎ合わせていくと物質的価値観の闇が色濃く浮かび上がってくるのが分かる。

「主要農作物種子法」とは何か。
“種子法”というのは、私たち日本人の主食である米・麦・大豆の種子を、国民に飢えさせることがないように国が管理する法律で、1952年に制定され戦後の食料生産を支えてきたものです。なぜ「種子法」の前に“主要農作物”という言葉が付くのかと言うと、コメの源となる種子は、安全保障の要であり、命の源でもあるからです。公的な種子事業の基本法である種子法によって、国として、県として、生産と消費を支える。計画的、安定的に種子が生産され、安価な価格で生産農家へ種子を提供できる。つまり種子法は国が責任を持って、食の安全を守るという法律。それが「主要農作物種子法」です。正確にはそれが主要農作物種子法でした…。ご存知の通り「主要農作物種子法」は2017年に政府によって廃止が決められてしまったからです。

どうして種子法は廃止されたのか。
私たち国民にとって、とても大切な種子法が廃止された理由は「企業の利益」の為です。種子法は「コメの種子開発と供給を企業に任せなさい」という理由から廃止とされました。今までは種子法によって、日本国民の食料を守るために私達の税金を使い、国と地方自治体が各地域の風土に適した品種改良を継続的に担ってきました。新潟県の「コシヒカリ」や北海道の「ユメピリカ」などの優良銘柄も種子法にもとづく事業から誕生しています。しかし政府は「都道府県が開発しているコメ、麦、大豆の品種(種子)の販売価格は安すぎる。これでは民間企業が種子開発事業に参入できない」と訴え、国民にとって重要な役割を持つ種子法を廃止としたのです。種子開発をする企業の利益を優先するためには安価でコメ、麦、大豆の種子を提供する公的機関はグローバル種子企業にとって邪魔な存在だったのです。

炙り絵のように現れる法改正の真の理由
種子法廃止の理由は、地方自治体に替わって、コメ、麦、大豆の主要農作物の種子開発をグローバル種子企業に委ねようということです。不思議なのはイチゴの苗やシャインマスカットについては海外流出を防ぐためといって「種苗法改正」を訴えていますが、コメの種子は企業に明け渡しなさいと法律で命令をしています。非常に矛盾を感じますが、当然です。海外流出を防止するというのは、取ってつけた理由であって、真の目的は別にあるからです。先に法律は単体で見てはいけないと申しましたが、グローバル種子企業は種子法の廃止だけでは満足できません。種子法廃止と同時に成立させた「農業競争力強化支援法」についても理解すると物質的価値観の闇が炙り絵のように浮かび上がってきます。

「農業競争力強化支援法」とは何か?
「農業競争力強化支援法」の8条4項には「これまで国や県の農業試験場が開発してきたコメの品種とその関連情報を民間企業に提供せよ」と書かれています。正確には「種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。」と書かれています。つまり「農業競争力強化支援法」とは、種苗の生産に関する知識や技術を持った公的機関の知見を企業に明け渡しなさいというものです。グローバル種子企業は公的機関が得てきた今までの歴史ともいえる知見を手に入れることができ、そして、この法律と種子法廃止がセットで成立されたために地方自治体に替わってコメの種子開発、種子生産への参入も促進されたのです。

タネの支配
公的機関が研究をして得てきた知識と技術をそのまま企業へ譲渡するということは、多国籍な遺伝子組み換えのバイオメジャーにとって大きな利益を生みだします。公的機関から明け渡された米の種子を利用して、少しだけ自分たちで手を加えて、それを特許化すれば、企業は「自分たちが開発した種である」と主張して独占し、種をコントロールすることができます。この非常に大きな問題が、種子法の廃止と民間活力の活用、譲渡の問題となっています。また後で詳しく述べますが、種苗法改正によって自家採種が禁止となれば登録品種と在来種の交雑による訴訟の問題なども起きる可能性もあるのです。

真打ちはこれから。
主要農作物種子法廃止、農業競争力強化支援法、と2つ目まで来ましたが、真打ちはこれからです。落語も前座、2つ目、と来たら次は真打ちです。ここで一席披露するならば「死神」でしょうか。種苗法改正によって命の源であるタネが支配されようとしています。命の灯を灯したロウソクが消えかかっているようにも思えます。あとひと息。フッと息を吹きかければ消えてしまうほどの状況なのです。私たちは最後まで笑えませんが、きっとグローバル種子企業は高笑いしているでしょう。ここまでの話も陰謀論とされてしまえば一笑にふされてしまうかもしれませんが、むしろ笑い話で終わってくれた方が安心です。

種苗法とは何か。
今回問題となっている「種苗法」とは何か?ということですが、種苗法とは種苗(植物のタネと苗)の知的財産権(著作権)を守る法律です。野菜や果物、穀物(米、麦、大豆)や草花など植物すべてを含んでいます。つまり種苗法=「種を作っている企業」(著作権者)を守ろうという法律です。

種苗法制定の背景
野菜や果物、穀物は日々、様々な品種改良がされていて、品種改良には、時間も手間もコストも掛かっていますので、開発者側の知的財産権を守ってあげようということで制定されました。

種子法と種苗法の違い
種子法と種苗法は「対象」と「保護する目的」が違っています。種子法の対象は「米、麦、大豆」、目的は「公的機関を中心とした種子の安定生産」です。種苗法の対象は「すべての農作物」、目的は「種苗育成者の知的所有権」です。今回問題となっている種苗法改正は「農家の自家採種を原則、一律禁止とする」ことが検討されていて、現行の種苗法では開発者と農家の「権利のバランス」をとってきたのですが、種苗法改正案では、一気に開発者側へ有利な法律として、改正されようとしています。

種には大きく分けて2つある
「登録品種」登録品種とは、種子企業などが新規性、区別性、均一性、安定性を満たした品種を開発して、申請して、品種登録をしたものです。著作権で保護された種のことを指しています。 「在来種」在来種とは固定種ともいわれていて、品種登録されたことがない品種+登録切れの品種(品種登録の有効期限は25年、樹木などの永年性植物は30年)を指しています。

※「一般品種」という言葉もありますが、これは農水省が最近になって作った言葉です。一般品種というのは在来種を指していますが、なぜ今になって一般品種という言葉を作ったのかというと、ここにも農水省の思惑を感じます。農水省は登録された品種というのは“極めて特別な品種です”と説明しています。ですから自家増殖が禁止される登録品種というのは “極めて特別な品種”に限られますから、一般品種には影響ありません。安心ですよと暗に示しているわけです。

登録品種は省令によって増加し続けている
種苗法改正によって自家増殖を禁止される登録品種は年々増加しています。これは自家増殖の禁止リストともいえると思いますが、農水省の省令によって、その生産者の権利を制限する種を決め、その種の登録品種は全て自家採種を禁止にすることができるのです。また農水省省令による自家採種禁止植物の種類は2016年まで82種だったものが2017年289種に急増し、2018年には356種に2019年3月には387種に増やされました。ですから農水省が“極めて特別な品種です”といった登録品種は年々増加をしているのです。

開発者と農民の双方の権利
もともとの種苗法は、開発者、農民の双方の権利をバランスよく保護していました。開発者には「育成者権」(著作権)が認められていて、農家(生産者)には、購入した種子を販売、転売することは禁止。しかし、植えた種によって育った作物から取れるタネを再利用(自家採種)することは可能となっています。ですから農家は毎年、種を買わなくてもよかったのです。

例外を削られる
現行法上は「育成者の独占的権利の“例外”として、農家の登録品種の種苗の自家採種」を認めています。しかし種苗法改正されれば、登録品種の自家増殖には著作権を持つ開発者の許諾が必要となります。これまでの自家採種OKの「例外」を外して、開発者の許諾を得なければ自家採種できないのが改正案です。つまり今回改正の最大の問題は種苗法 第21条第2項の削除にあります。

種苗法 第二十一条 第2項の削除
第二十一条 第2項 農業を営む者で政令で定めるものが、最初に育成者権者、専用利用権者又は通常利用権者により譲渡された登録品種、登録品種と特性により明確に区別されない品種及び登録品種に係る前条第二項各号に掲げる品種(以下「登録品種等」と総称する。)の種苗を用いて収穫物を得、その収穫物を自己の農業経営において更に種苗として用いる場合には、育成者権の効力は、その更に用いた種苗、これを用いて得た収穫物及びその収穫物に係る加工品には及ばない。ただし、契約で別段の定めをした場合は、この限りでない。

加工品からもお金が取られる?
記載の通り改正案では第二十一条 第2項が削除されています。これが削除されれば自家増殖は原則一律禁止となり、自家増殖する場合には許諾が必要。つまり許諾料が必要になり、また収穫物にかかる加工品にもお金が取られる可能性があるのです。実際に南米では、種に高い特許を支払い、それによって作った収穫物。また収穫物から作った加工品からもお金が取られました。企業により農家は二重にお金を取られ負担を強いられていたのです。

農民の権利より企業の利益へ
今回の種苗法改正は、登録品種の自家採種を原則禁止にすることにより、これまでの「自家採種原則OK」を逆転させて種苗法を種子企業の利益により合致するように改正することで、これまでのバランスを崩していくものです。

自家増殖の全面許諾性にすると農家の負担が増える
種苗法改正案が成立すると次作以降は自家増殖禁止なので、農研機構から毎年種苗を購入するかお金を払って許諾してもらわなければならなくなります。許諾料については、公的機関が開発した品種であれば高額になることは想定されないとしていますが、種子法廃止と農業競争力強化支援法によって公的機関の知識や技術は企業に明け渡すことになりましたので、先に述べたように企業が公的機関より譲り受けた種子に対して、少しだけ自分たちで手を加えて、それを特許化すれば、企業は「自分たちが開発した種である」と主張して独占することも可能なのです。

交雑の問題と訴訟のリスク
海外では、農家が意図をしていなくても登録品種(遺伝子組み換え作物)が風にのって農家が育てていた作物と交雑し「知的財産権を侵害した」として、企業から訴訟されるケースが多発しています。提訴された農家は全く覚えがなく、調べてみるとモンサントの遺伝子組み換え作物の花粉が風に乗り、育てていた在来種と交雑していたということです。しかも、防ぎようの無い状況にもかかわらず、交雑をすれば訴訟され、敗訴にまで至っています。類似の事例で訴訟された例は世界で500件以上あります。日本でも何らかの登録品種が在来種と交雑し、登録品種に形状や特質が似た場合訴訟を起こされる可能性もあるでしょう。農家が対峙しなければならない相手は、登録品種を広めたいグローバル種子企業です。これら有力な弁護団を抱え、ロビー活動や訴訟に長けた大資本を持つ企業と、一農家が訴訟となった時、どちらが有利かは一目瞭然です。

在来種か登録品種かは農水省が人的能力で見分ける?
登録品種と固定種の見分け方が非現実的であると指摘されています。先に述べた交雑の問題の他にも、種はその土地の気候や風土に根ざした変化をしていくため、同じ在来種と言えど、その環境に適応した変化をしていくことになります。常に同じ形状や特徴を持つことがありませんので、もし在来種が土地や気候の変化により登録品種に近い形質となることも考えられるのです。また作物にはいくつもの種が存在します。例えば、大豆においては何万種。大根は何千種もの種があるわけで、これら細かな特徴を持つ品種を「特性表」や「人的能力」だけで見極めることは、非現実的だと言わざるを得ません。

種苗法改正案の問題点
「日本の優良な種苗を流出させないように」といいながら、すでに存在する「農業競争力強化支援法」では国や都道府県が持つ種苗の知見を多国籍企業を含む民間企業に渡すことを求めていて、合法的に種苗の知見を(外資に)流出させることができる法律がある中で、流出規制をすることに整合性がありません。また過去に農水省は「海外において品種登録(育成者権の取得)を行うことが唯一の対策となっています。」とコメントをしています。国が開発をした「シャインマスカット」ですが、国外流出を防げないのは、海外で品種登録をしなかった農水省の問題とも言えるのではないでしょうか?

種苗法改正の本当の狙いとは
登録品種が海外で流用するのを防ぐために農家の自家採種を禁止するというのは、とってつけた理由であって、本当の狙いは遺伝子組み換えとかゲノム編集作物を開発するバイエル(モンサント)、ダウデュポン、シンジェンタ(ケムチャイナ)など、ごく限られた国際的な大企業に添うように農家の種取りを禁止するためです。まずは種子法廃止によって、主食のタネを安く公的機関が開発するための予算をつぶしてしまいました。次に私たちの税金で公的機関が開発した貴重なタネのデータを企業に提供しなさいという農業競争力強化支援法を出しました。そして最後に3つ目の農家によるタネ取りを禁止する種苗法の改正です。これによって種の価格の支配力は極限られた種会社に牛耳られるようになり、企業が売りたい種、儲かる種だけを売れるようになります。それは遺伝子組み換えの種、ゲノム編集作物の種かもしれません。私たちが買いたくない。消費者が欲しくないといってもそれしか供給されなければ、その種子を蒔くしかないのです。食料自給率が低い日本ですが、企業がタネを支配することで、企業はタネを売らないという選択もできるのです。タネを制するものは世界を制するです。

何故なのでしょうか?
アメリカから大量に輸入された遺伝子組み換えのトウモロコシは家畜用の飼料になり、砂糖の代用品のコーンスターチになるかもしれません。日本のサトウキビ農家が種苗法改正により負担が増え廃業が迫られています。砂糖の代用品は何でしょうか? 地球温暖化における原因は畜産業による影響が大きいとされています。家畜の飼料は何でしょうか? ゲノム編集食品は日本では安全性の評価も表示もいらないとされました。何故でしょうか? 日本の食料自給率の計算方法が変わりました。何故でしょうか。全ての一連は繋がっているように思えます。物質的価値観の闇が広がっているのです。

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